むかしむかし、あるところにちっちゃな、かわいい女の子がおりました。その子は、ちょっと見ただけで、どんな人でもかわいくなってしまうような子でしたが、だれよりもいちばんかわいがっていたのは、この子のおばあさんでした。おばあさんは、この子の顔を見ると、なんでもやりたくなってしまって、いったいなにをやったらいいのか、わからなくなってしまうほどでした。
あるとき、おばあさんはこの子に、赤いビロードでかわいいずきんをこしらえてやりました。すると、それがまたこの子にとってもよくにあいましたので、それからは、もうほかのものはちっともかぶらなくなってしまいました。それで、この子は、みんなに「赤ずきんちゃん」「赤ずきんちゃん」とよばれるようになりました。
ある日、おかあさんが赤ずきんちゃんをよんで、いいました。
「赤ずきんちゃん、ちょっとおいで。ここにおかしがひとつと、ブドウ酒がひとびんあるでしょう。これをね、おばあさんのところへもっていってちょうだい。おばあさんは病気で、よわっていらっしゃるけれど、こういうものをあがると、きっと元気になるのよ。じゃ、暑くならないうちに、いってらっしゃい。それからね、そとへでたら、おぎょうぎよく歩いていくのよ。横道へかけだしていったりするんじゃありませんよ。そんなことをすれば、ころんで、びんをこわしてしまって、おばあさんにあげるものが、なんにもなくなってしまうからね。それから、おばあさんのおへやにはいったら、いちばんさきに、おはようございますって、あいさつするのをわすれちゃだめよ。そうして、はいるといっしょに、そこらじゅうをきょろきょろ見まわしたりするんじゃありませんよ。」
「だいじょうぶよ。」
と、赤ずきんちゃんはおかあさんにいって、約束のしるしに指きりをしました。